1つの不動産に複数の所有者がいる状態を「共有名義」といい、共有名義の不動産は少なくありません。
なかには、兄弟で共有名義にして不動産を相続しようとお考えの方もいるでしょう。
しかし、共有名義の不動産は、あとからさまざまなトラブルを生む可能性があります。
この記事では、不動産の共有相続によって将来的に起こり得るトラブルについて解説します。
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不動産を共有している人を「共有者」といい、共有者が持っている権利を共有持分権といいます。
共有者が共有不動産に対してできることは以下の3つです。
●保存行為
●管理行為
●変更行為
ただし、上記の行為すべてを自由におこなえるわけではありません。
なかには共有者全員の同意が必要なケースもあり、意見がまとまらずトラブルになることも多いです。
どのようなケースで同意が必要になり、どういった点でトラブルになりやすいのか、それぞれの内容を順番に解説します。
保存行為
不動産を保存(維持)するために、修繕や管理することを「保存行為」といいます。
また、不動産を無断で利用している人を追い出すのも、この保存行為にあたります。
保存行為は単独でもおこなえますが、費用がかかる場合は、共有者同士で費用負担の割合について話しあわないといけません。
共有者のなかで費用の負担に応じない方がいる場合、修繕ができずにトラブルに発展する可能性があります。
管理行為
管理行為とは、不動産の性質を変えない範囲で利用・改良する行為のことをいいます。
たとえば、不動産を賃貸に出す・契約を更新するなどです。
管理行為をおこなうには、共有持分の半数を超える賛成が必要です。
管理行為においては、物件を賃貸に出した場合の、賃料の分配をめぐってトラブルになるケースが少なくありません。
また、入居者のなかに共有名義の人がいる場合、ほかの共有者に対して賃料を支払うかどうかで揉めるケースもあります。
変更行為
変更行為とは、不動産の状態を変更する行為のことです。
たとえば、不動産の売却・解体・抵当権の設定などが挙げられます。
管理行為をおこなうには、共有者全員の同意が必要です。
たとえば、4人中3人が賛成したとしても、全員の同意が得られない限り売却や建物の解体などはおこなえません。
そのため、話し合いが進まずに共有者同士で揉めるなどのトラブルに発展するケースが多いです。
不動産の共有相続後のトラブル:メガ共有について
不動産の共有名義における問題点の1つに「メガ共有」という状態があります。
このメガ共有は、日本で社会問題になっており、テレビで耳にしたことがあるという方もいるのではないでしょうか?
ここでは、メガ共有とはなにか、どのような問題があるのかをご説明します。
メガ共有とは
メガ共有とは、相続未登記などが原因で不動産の所有者が多数人にのぼり、権利関係が複雑になった状態のことを指します。
なぜこのようなことが起こるのでしょうか?
通常、亡くなった共有者の持分は「法定相続人」「特別縁故者」「ほかの共有者」の順に相続されます。
たとえば、3名で不動産を共有しており、共有者の1人が亡くなったと仮定しましょう。
亡くなった共有者に3名の相続人がいる場合、もともとの共有者2名+相続人3名となり、不動産の共有者がトータル5人になります。
このように共有相続を繰り返すことによって、雪だるま式に共有者がどんどん増えていくのです。
ここできちんと相続登記をしていれば良いのですが、手続きをしないまま放置している方も少なくありません。
こうして相続登記がされないまま、2世代、3世代と共有者が増えていくことで、所有者が把握できない状態に陥ってしまいます。
どのようなトラブルが起こる?
相続を繰り返して共有者が増えた不動産は、人数が多いぶん意見がまとまりにくくなります。
会ったこともないような親戚が共有者となっていることもあり、行方がわからないということも少なくありません。
このようなケースでは、共有者全員の意思確認が困難です。
さらに、相続によって共有者が増え続け、所有者の特定が困難になってしまった物件も存在します。
所有者がわからないと、売買などの取引がおこなえません。
そのため、再開発や公共事業の支障となり、現在社会問題になっています。
このように、所有者の特定が困難になった不動産は「所有者不明土地」と呼ばれています。
令和3年の相続法改正により相続登記が義務化
メガ共有状態のまま放置された不動産が社会問題となっていることから、令和3年の民法改正にて共有制度について見直しがおこなわれました。
改正後には、不動産の相続登記が義務化されます。
相続登記が義務化されると、相続人は必ず相続登記をしなければなりません。
これを怠った場合、10万円以下の罰則が科される可能性があります。
不動産の共有相続後のトラブル:共有物分割請求訴訟とは
ここまで、共有不動産の問題点について解説してきました。
不動産の共有状態を解消したいけれど、意見がまとまらない場合はどうしたら良いのでしょうか?
このようなケースでは、共有物分割請求によって、法的に共有状態を解消する手段があります。
共有物分割請求訴訟とは?
共有物分割請求訴訟とは、裁判による共有状態の解消方法です。
協議をしても意見がまとまらず、共有状態が解消できない場合に用いられます。
法的に強制力があるので、共有物分割請求訴訟をおこされた共有者は、それに応じなければなりません。
分割方法
共有状態を解消する方法には、「現物分割」「代償分割」「換価分割」の3つがあります。
それぞれの内容について、順番に解説します。
現物分割
現物分割とは、共有物をそのまま分割する方法です。
たとえば、1筆の土地を共有者同士で分筆して、それぞれが土地を受け取ります。
一戸建ての場合は、区分所有とすることで複数の建物にわけられますが、区分所有建物である分譲マンションは、そもそも分割ができません。
そのため、実際には現物分割がおこなわれることは少ないです。
代償分割
代償分割とは、共有者の持分をほかの共有者が買い取ることです。
ここでは、共有物持分の価格をいくらにするかがポイントになります。
基本的には共有者同士で話し合って決めますが、話がまとまらない場合には、不動産鑑定士によって金額が決定します。
換価分割
換価分割とは、共有状態の不動産を売却して得た利益を、持分割合に応じて分配することです。
売却方法は共有者同士で話し合って決めます。
話がまとまらなければ、裁判所によって競売の判決がくだることもあります。
共有物分割請求訴訟のメリットとデメリット
共有物分割請求訴訟による分割のメリットは、法律に則った適正な分割方法を指定してくれることです。
代償分割時の共有物持分の価格も、不動産鑑定士によって金額が決まるため、不公平感がないというメリットがあります。
一方、デメリットは「手間や費用がかかる」「共有者との関係が悪化する」「時間が必要」などです。
また、共有物分割請求訴訟の判決によっては、競売になる可能性もあると理解しておかなければなりません。
競売の場合、共有者の意思に関係なく強制的に売却されるため、取引価格が相場よりも低くなる傾向にあります。
まとめ
共有名義の不動産は、個人の意思だけで売却や活用ができず、共有者の意思確認が必要です。
なかには、意見が対立して相続人同士の関係が悪くなるケースもあります。
共有不動産を相続した場合には、早めに共有状態を解消できるよう行動することがおすすめです。
また、実家が共有不動産で今後相続の予定がある方は、代償分割や換価分割を検討しましょう。
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