火災保険の契約期間が変わります。
従来よりもその期間が大幅に短縮されることになりますが、改正の背景についてご説明いたします。
同時に、今回の改定による影響やその対応策などについても深く掘り下げています。
新たな動きとしてのハザードマップ連動型火災保険についてもまとめましたので最後までご覧ください。
火災保険の10年契約が廃止されるのはなぜか
火災保険とは損害保険の一つで、火災や風水害による建物や家財などの損害を補填する保険です。
建物の部分である不動産と、家具や什器などのいわゆる動産が保険の対象となります。
火災保険は保険の対象を個々に設定し、加入するという仕組みとなり、建物のみに保険がかかっているケースでは、動産の部分においては補償されません。
つまり、対象の範囲をどこまでにするかということが保険加入時にもっとも慎重に考えるべき点で、保障の対象範囲を広くするとその分保険料は高くなります。
次に「火災」という名称が付いていますが、火災以外が原因の事故についても補償され、たとえば雷による損害や洪水などによる水害についても保険の範囲内として扱われます。
ほかにも空き巣による盗難や台風などの強風や大雨による被害、あるいは車の飛び込みや飛来物により損害が出た場合も補償の対象です。
そしてこの火災保険の契約は今までは最長で10年となっていましたが、今回大手の損害保険会社はそろってこの10年契約を廃止する方針となりました。
代わって新たに設けられた最長期間は5年となっており、契約期間を短くすることで保険料の値上げをしやすくすることが狙いとみられます。
ではなぜ各損害保険会社は足並みをそろえて5年契約へと舵を切ったのかということですが、近年大規模な自然災害が相次いで起こっていることが発端となります。
災害が立て続けに起きていることで、損害保険会社も保険金の支払いの負担がかなり重くなっているため、先述のように値上げがしやすい状況にもっていきたいわけです。
なぜ10年という設定だったのかというと、以前であればこの10年の間に自然災害がどれくらいの頻度でどのくらいの規模で起こるのかが推測できたわけです。
しかし、地球規模での環境の変化によって今まで災害リスクの程度推測できていたのが、10年スパンではほぼ不可能となってきました。
もし想定以上の災害が起こり、保険金の支払い額が今よりも大きくなってくれば、損害保険会社としては会社としての存続にも関わってくる大問題となります。
この収支悪化というリスクと、10年間保険料の値上げができないという収支改善への悪影響が10年契約廃止となる大きな原因と言えるでしょう。
火災保険の10年契約廃止はいつからになるのか
火災保険の保険料率は、料率算出団体が膨大なデータから導き出した参考料率を各損害保険会社に提供し、それを基に算出されます。
この参考純率はそのままの数値で利用されるわけでなく、各損害保険会社がそれぞれの経営方針や事業費などを勘案して独自に決めるのが一般的です。
さて気になる保険料の値上げがいつからになるのかということですが、見通しとしては2022年10月が目安となり、各損害保険会社から随時発表されることになっています。
もちろん2022年10月以降まで契約が残っているものに関しては、その期間内までは保険料率はそのまま維持され、契約更新時に新たな保険料率が適用されることになります。
その保険料率算出団体による新たな参考純率ですが、全国平均で10.9%の引き上げと発表され、2005年の8.7%を大きく上回るものになりました。
また契約期間が5年ということで、改定の影響を受けやすくなり、この10.9%という参考料率も5年後の更新時に同じ数値であるとは言えず、さらなる引き上げも考えられるのです。
もともと10年契約という長期契約においては、その保険料は割安とされていて、これを5年契約×2回と比較すると10年のほうが安くなり、その差額は更新のたびに大きくなります。
つまり、こまめに更新するほうが家計への負担増となる可能性が高くなり、もちろん補償内容についても改定の影響が出てくることが想定されるのです。
今回のこの改定はいずれ受け入れることになりますが、できるだけ先延ばしにして家計への負担増を避けたいのが保険加入者の本音でしょう。
そのためにできる対策として、まずは改定前に長期の契約を結ぶことで、それにより改定以前の保険料率を維持でき、仮に途中解約をしても未経過の保険料は返金されます。
次に補償内容の見直しは必須で、当然のことながら補償内容が充実するほど保険料は上がっていきますので、補償の必要性をしっかりと吟味して契約に臨みましょう。
また免責金額の設定額を高くすることでも保険料は抑えられますが、あくまでもその負担が耐えられる範囲内で設定することが重要なポイントです。
火災保険の10年契約廃止で保険料がハザードマップ連動型になる
今までは火災保険料率は、各都道府県において一律とされてきましたが、大規模な自然災害が相次いで起こっている現状を踏まえ、ハザードマップと連動させる動きが起きています。
たとえば水害とは無縁とされる山手の住宅地と河川や海辺の住宅地の保険料が同じであるのは公正ではないという考え方が広まりつつあるのです。
この考え方にすぐ反応したのが楽天損保で、2020年の4月1日からの契約分に関してはこのハザードマップ連動型をすでに導入しています。
また東京海上日動などもハザードマップ連動型の保険料率とすることを発表していますので、早かれ遅かれ各損害保険会社も足並みをそろえることになりそうです。
実はこのハザードマップにもいくつかの種類があり、火災保険料と連動させるのは風水害のリスクに備えるための洪水ハザードマップとなります。
では実際にその風水害リスクの程度の違いにおいてどのくらいの差が出るのかというと、楽天損保の場合は最大1.5倍の差が発生してしまいます。
もちろんこのリスクの違い、つまりリスク区分に対応する保険料率は各損害保険会社で変わってくるでしょうし、基本的な対応自体にも差が出ることが考えられます。
ただ、自宅が洪水ハザードマップ上でどのような状況下にあるのかを把握しておくことは重要で、浸水深が1m以上であれば災害時に全壊の恐れがあります。
自宅が水災のリスクが低い区域にある場合はハザードマップ連動型を選ぶことで、保険料率を低く抑えることができますので、そういった保険を選ぶと良いでしょう。
逆に浸水深が危険区域とされる0.5m以上の場所にある場合は、連動型にすると保険料率が高くなりますので、従来の保険料率を設定している火災保険のほうを選んでください。
自宅がマンションといったケースでは、実は1階であっても5階であっても保険料率は同じですので、自宅のある階数によって補償内容の再考をおすすめします。
まとめ
ハザードマップ連動型の導入も始まり、火災保険も新たな時代を迎えることとなります。
自然災害はこの先も減っていくことはないと考えられていますので、10年契約廃止をきっかけとして、今一度火災保険についてじっくりと考え直してみてはいかがでしょう。